帰ってきたどころかパワーアップし過ぎてた話~Endless SHOCK~

観てきました、Endless SHOCK 2022 at 博多座

やっと帰ってきた本編
待ち望んだ本編


ライバル役に北山宏光さん。
歌も上手い、踊りも上手い。
演技も振り幅が広く、闇もつくりだせる彼に
初めから絶大な信頼を置いていました。


もちろん博多まで足を延ばすことに一切の躊躇はなく、ただひたすらに楽しみにその日を待っていました。そしてやっと迎えた観劇の日、長年愛してきたEndless SHOCKの舞台からわたしが受け取ったのはあまりにも衝撃的なものでした。「良すぎた」のです。もとより絶対的かつ絶大な信頼を寄せ、高すぎるくらいの期待もしていたのに、です。


北山さんはこれまでと一線を画すライバル像を創り上げていました。おそらく、ほぼ全てのオタクがこれまで同様に


ギラギラで

ライバル心むき出しで

抑圧され、ギリギリのところにいる



そんなライバル役を演じる北山さんを想像していたと思います。それが、蓋を開けてみたら



全然ちがう。


ぜんっっっっぜん違う!!!!



予想より大人びていて、コウイチの才能を認めていて、僻みよりも自分への苛立ちや不甲斐なさの実感が大きく、素直さも持ち併せているのに、ただ不運にも追い詰められてしまっただけの、そんなヒロミツがそこにいました。


少し話が変わりますが、実は個人的に長年、ライバル役にとってネックだなぁと感じていたのが、ふぉ~ゆ~の存在です(褒めてます)。SHOCKカンパニーの中のライバル役はコウイチに次ぐポジションですが、あのカンパニーにはふぉ~ゆ~(越松)がいるわけで。長年SHOCKに出演してきた実績から導かれた圧倒的安定感がある。それを超越する2番手としてのスキルが必要になってしまうのが、ライバル役にとってとても高いハードルだと思っています。


コウイチを超えられない

それでもやっぱり輝いてはいて

1番でも3番でもなく

あくまでも2番でいなければならない。



これ、めちゃくちゃむずかしくないですか?ちなみに、これまでライバル役のソロ曲(今は「MOVE ON」)は「粗削り感」を出すのが定番だったと思います。でもこれがまさに難しいところで。これまでは粗削りになればなるほど、「なんでこの人がこのカンパニーの2番手?」という疑問が頭に浮かびました。個人的にそんな考えを持ちながらみてきたライバル役のソロ曲ですが、今回のMOVE ONの北山さんには粗削り感はなく、歌もダンスも丁寧で、上手くて。それでもトップスター「だけ」がもつ華やかさは出さず、一方で秘めたる野心は感じさせられる、そんなMOVE ONでした。彼がこのカンパニーの一員であること、コウイチに次ぐスターであることに違和感を覚えさせないものでした。


本来幼少の頃より切磋琢磨してきた
とても素敵なカンパニーの一員だから。
きっとミュージカルを愛して、
人を愛し、愛されてきた人間だから。
ただ粗削りなんじゃなくて、
ただワガママなんじゃじゃなくて、
ライバル役には愛される人柄が
根底にあってしかるべきだと思うから。


ヒロミツの人物像すら観客に伝えられる、そんなMOVE ONだったと感じました。あれを見た瞬間、新しいEndless SHOCKが生まれることを確信しました。
ただ帰ってきた本編なのではない。とんでもなくパワーアップした本編なのだと覚悟を決めて観ました。

ここからは印象に残ったところを箇条書きで。

〇屋上のシーン
リカがコウイチにネックレスを渡したときの表情もなんとも言えず。きっとコウイチを認めているからこそ、ただただ僻むこともできない苦しみがきちんと感じられました。

〇バックステージ
コウイチは「ただ自分が出られなかったことに怒っているだけ」と窘めますが、私には「ただ自分が出られなかったことに怒った」のをきっかけにしつつ、苦し紛れながらも冷静な問題提起はされていたように思います。「ああすりゃよくなる、こうすりゃどうって毎日変更だして」いくことは、SHOCKの世界では是とされていますが、リアルの世界ではきっと賛否あると思います。私個人は、変更も改善も生もののエンタテインメントならではだと思っているので大歓迎の人間ですが、毎日同じものを提供するのがプロだという意見もきっとあるでしょう。ヒロミツが実際にそう思っていたとは思いませんが、あの問題提起をただの八つ当たりとして一蹴してしまうのは乱暴かもしれないと考えさせられました。
そして忘れられない、あのサラッとした「Show must go onかよ」の言い捨て方!過去イチでサラッとしていたように思います。あくまでも感情を抑えながら、諦めにも似たあの表現には心打たれました。

〇Japanesque
・殺陣
ちょっっっっっっっっっっっと待った!!!!と叫び出しそうになるほど、これがすごかった。剣先のブレなさですよ!歴代ライバルの中で一番ブレなかったんじゃないでしょうか。光一さんもこだわっているポイントだけれど、振りぬいた刀は、手元で数ミリでもブレれば剣先は数センチのブレになると言われています。実際、何度もブレた剣先を目にしてきましたが、こればっかりは相当鍛えないといけないだろうし、光一さんと同じレベルを求めるのはあまりにも酷だと思っていました。それが、北山さんはピタッと止めてきたので衝撃でした。どれだけ鍛えたんですか?インナーマッスルサイヤ人級ですか?

・階段落ち前
予備の刀をコウイチが引き抜いた後、ヒロミツの表情には「俺の勝ちだよ」という感情は微塵もみて取れませんでした。個人的な見解ですが、そう思いたい気持ちはありつつも、コウイチのプロ精神を誰より知っているヒロミツは、心のどこかではコウイチはたとえ予備の刀が本物の刀であったとしてもショーを続ける可能性があると思っていたのではないかと感じました。だけどその事実を受け入れきれず、コウイチの挑発にどう対応すべきか戸惑い、最後には刀を引き抜くヒロミツは、私の目には「ただ挑発に乗ったライバル役」ではなく、2幕でコウイチが言うように、「ショーを続ける強い心」をもっていたように映りました。「本物の刀で続けられるかよ」そう言い捨てれば無理矢理にでもショーは止められたのに、それをしなかったライバル役としてとても自然に映ったのが印象的でした。

シェイクスピア
詳細は割愛しますが、全体としてどの演目でも苦悩とショーを続けようとする意志との葛藤がよく表れた表情が印象的でした。

〇Higher
個人的に印象的だったのはヒロミツの「手」。気持ちを押し込めるようにだんだんと力がこもる手。時々緩み、そしてまたギュッとなる握りこぶしが忘れられません。彼の心の葛藤がよく表れていました。

マツザキの寄り添いを強く拒絶しはねのけるのではなく「大丈夫だから」とでも言うように肩を軽く押すだけなのも忘れられません。
これまでのSHOCKで個人的に違和感があったことのひとつに、マツザキがHigherに加わるシーンが挙げられます。なにがあってもライバル役のそばにいるようコウイチに託されたマツザキが、コウイチの帰還に戸惑い明らかにギリギリの精神状態のライバル役を横目にHigherに加わるのがすんなり飲み込めませんでした。まるでライバル役を置いていくかのようで。でも今回のライバル役、ヒロミツはマツザキの肩にそっと触れるだけで強い拒絶は見せないんですよね。自制がきいていて、「大丈夫だから、お前は行ってこい」とでも言うように触れる。そのおかげでマツザキがHigherに加わったのもすとんと胸に落ちた。そして、コウイチが1幕でリツキに言う「大丈夫、ヒロミツのとこ行ってこい」の発言が思い起こされて、コウイチとヒロミツが互いに互いを認め、仲間が互いのそばにいることを望んでいるのだということが伝わってきて胸が張り裂けそうだった。
「焦れば焦るほどみんなも俺から離れていった」と言うヒロミツは、辛くても張り裂けそうでも間違いを犯してもなお、最後の最後までコウイチを認めてコウイチを想っていたんですよね。あぁ、今も泣きそう。

〇コウイチの死
 SHOCKで涙を流すシーンの定番、ライバル役の「なんで誰も何も言わないんだよ!」「オーナー嘘ですよね…」「嘘って言ってよ…」「言えよぉ…」。歴代のライバル役に比して大人びて見えたヒロミツの消え入りそうな「言えよぉ…」は、まるで小さな子供のようで、見ていられませんでした。あれは…泣くよ…。周囲が一斉にハンカチを目元に当てているのを感じながらの観劇でした。

〇夢幻
 コウイチとのシンクロ性の高さがピカイチ

〇ラダーフライング
 コウイチを見つめるヒロミツの絶妙な表情。コウイチの背中を一瞬たりとも見失わないとでもいうかのような、そんな表情で、時々下唇を噛むのも印象的でした。ここでもちょっと泣きました。


総論として本当に最高でした。これ、是非帝劇で見たいです。お願いだから帝劇で見せてくれ。頼む!!!!!どうか届いてこの思い!!!そして最後に、北山さん、最高のEndless SHOCKをありがとうございました!