Endless SHOCK 2023 -花束を君に-

千秋楽から随分と時間が経ってしまったのだけれど、北山さんがライバル役を務めた、Endless SHOCK 2023について書き残したい。

正直、言葉で表せるレベルではなかった。
それでも、溢れるこの思いをただ自分の中で消化することはできなくて、観たくても観られなかったひとがいるのなら伝えたくてどうにか言葉を尽くせたらと願う。

北山さんがライバルを務めたEndless SHOCK本編は、2022年に博多座で観劇し、そのクオリティは折り紙付き。当時史上最年少で帝国劇場で座長の立場となり、その後20年以上にわたってSHOCKを演じ続け、いまや作・構成・演出・主演の全てを手掛ける堂本光一さんに「ヒロミツのEternalが見たい」と言わしめた。ジャニーズ事務所を退所することが決まっていても、北山さんのSHOCK出演は揺らがなかった。実績と信頼が違うのだ。

※Endless SHOCK 2022(博多座・本編)の感想はこちら
moz.hatenablog.com

結果として2023年は本編とEternalの両方を演じるという、出演者泣かせのとんでもない事態となったのだけれど、北山さんのSHOCKを帝劇で見たいと叫んだ私としては、帝劇で見られるのみらず、2作とも鑑賞ができる大変贅沢でありがたい話ではある。
ちなみに、本編については2022年にあれだけ感想を書いたのだから、今年はEternalの感想だけ書けばいいかと思いきや、北山さんは昨年も演じたはずの本編すら進化させてきたので、このブログはまた長文になる。

ここからは、良かったところを箇条書きで。
※本編とEternalで感想が重複するところは本編の感想としてつづるので、結果的に本編のボリュームが多くなりました。

[本編]
〇Yes, My Dream
この曲に限ったことではないですが、やはり北山さんは歌唱力があるので、伸びやかで耳心地がいいです。木箱に乗ってコウイチとヒロミツが近づくシーンはもう「圧倒的なスター2人」。やはりヒロミツのライバルの良さは「コウイチと対等なライバル」として申し分ないこと。

〇劇場の屋上
このシーン、ヒロミツはマツザキと絡むシーンでしか笑わないんですよね。コウイチ「みんながひとつになったとき、いいものが作れるんだよ」の時の表情が、ヒロミツだけ苦しそうだったのを鮮明に覚えています。見つめ合って歌うコウイチとリカを切なさそうに見つめるヒロミツも胸を締め付けられました。屋上のシーンはこれまでもライバル役にとっては苦しいシーンではありましたが、ヒロミツが圧倒的でしたね。でも、周りの空気を壊すような自己中心的な感じでもなく、あくまでも秘めた苦しみが垣間見えるのが余計に切なかった。

〇ニューヨークの街
北山さんの演技の幅が分かりやすいシーンです。リカちゃんへの告白のキュートさから、「お前は黙ってろ!」と声を荒げるあの緩急をここまでつけたライバル役は初めてかもしれませんね。今までは「ギラギラなライバル役」がリカちゃんの前だけでおとなしくなるという印象でしたが(トラが猫になるみたいな)、ヒロミツは持てる本来の優しさと可愛さがあって、それを遺憾なく発揮している印象。もともと北山さん自身可愛い人ですから、彼の持てるポテンシャルが引き出されていて好きです。
 
〇MOVE ON
ヒロミツの存在感たるや。かつてはライバルに合わせた曲が披露されてきましたが、今はMOVE ONを定番化させる流れ。ほかのライバルも歌う曲を自分のものにするのは難しいと思うけれど、そこは信頼と実績の北山さん。昨年もそうでしたが、これまでのギラギラ感や粗削り感がなく、絶対的なライバルとして、丁寧で伸びやかな「魅せる」パフォーマンスには感嘆の一言です。

〇バックステージ
昨年も言いましたが「Show must go onかよ」の言い方。過去のライバル役に類を見ない言い方です。まず、読点がないんです。音でしか聞いてないですけど、読点がない。これまでは「"Show must go on"かよ」が定番でした。この読点。「、」この間があった。ヒロミツにはそれがないんです。これね、結構革命なんですよね。で、また言い方も力が抜けていて、諦めにも似た言い方なんですよね。「Show must go on」を貫くコウイチにうんざりしているんじゃなくて、ついていけない悲しみすら感じさせる、その表現力に脱帽です。

〇Japanesque
殺陣が圧巻。今までの「悪役」からの脱却。殺したくて殺してるんじゃないというのが伝わってきます。狂気に身を包んでいるのではなく、やり場のない気持ちを抱えて戦っている印象。コウイチが「死に損ない」と言われるほどボロボロになっても戦い続ける姿を、階段の上で静かに伏し目で見てる。睨むでもなく、あざ笑うでもなく、ただ静かに、感情を無くしたかのようにみている。あの表現も北山さんにしかできない、ヒロミツならではのものだと強く感じました。

本物の刀をコウイチが抜いた時の心情としてのちに2幕で語られる「俺の勝ちだよ!」という表情が、実際のシーンで全く見て取れないのは、昨年と同じ。むしろ(コウイチ、お前は続けるんだろ…?)くらいに見える。個人的な解釈ですが「俺の勝ちだよ!」は実際の心情ではなく、刀をすり替えたときにヒロミツが期待した展開でしかないのではないかと思っています。私には、ショーを続けるコウイチに対して(お前本気か?本気なんだよな。でもやめてくれ…)という抵抗、これ以上ついていけないことへの悲しみ・苦しみに満ちた表情のように受け取れました。階段落ち前に涙が出るのは、これまでヒロミツのライバル役でしか経験したことがありません。

本物の刀を抜いたあとの演技も、これまでのライバル役とは全く異なりました。慌てふためき、うろたえるのではなく、平静を装おうという感じ。これがコウイチが、ヒロミツが持っていると伝えた「ショーを続ける強い心」なのかな。そして階段落ち後の表情と手の震えに胸が締め付けられました。



ちなみに、階段落ちで1幕が終わることなんて、もう全国民が知ってる。でも、圧倒され過ぎて全然お手洗い行けない。立てない。余韻がありすぎる。心が苦しすぎる。


シェイクスピア
リチャード3世で光一に「続けろよ」と言われたあとの心許ないヒロミツの「え?」から、ショーを続けると決める時の切り替えがすごい。夢の中で、何度も恐怖に苛まれながらもショーを続けようとするヒロミツの心の葛藤がよく表れています。そして、夢から目を覚ます前のヒロミツの演技が驚くほど細かい。体の震えに、心情が読み取れる。

〇Higher
昨年は、下手側で何度も手を握りしめる演技が印象的でしたが、今年はそれが無くなりました。コウイチの帰還に一時的に取り乱すものの、その後は脱力したように一点をみつめてる。曲後半はほとんど表情が変わらないのに、虚空を見つめるヒロミツに胸が締め付けられて目が離せませんでした。

〇バックシアター
コウイチが戻ってきたとき「何しに戻ってきやがった!」と突っかかるのに、死んでいたと知ったときの「なんでお前ら何も言わないんだよ」「いぃえぇよぉぉ…」を聞くと、ヒロミツにはコウイチに対して仲間だからこその甘えがあることを痛感する。絶対に失いたくない存在だったのに、目の前にしたらぶつかってしまう。幼なじみだからこその甘えに、ヒロミツの青さと幼さを少し感じて、ヒロミツという存在が愛おしくなる。
「言えよぉ」は消え入りそうに言うのがセオリーだったように思うけれど、あの一音ずつ拗音を挟むような言い方はヒロミツ特有の新しいアプローチのひとつ。すがりつくような心情が伝わる。セリフが心臓にまとわりつく感覚を覚えました。

「止まったやつは切り捨てられるんだろ?」の言い方、これもヒロミツでしか見られない特徴的な表現。それから「誰も振り向いてくれない悲しみ、俺には分かるんだよ」に力がこもっていなくて、ワントーンなのもヒロミツならではです。このセリフをよくワントーンで言おうって思えるな!?と驚きを禁じ得ないのだけれど、このトーンが見ている者の心に刺さるからすごい。やっぱり表現力が段違い。

〇太鼓
コウイチを横目でチラッと確認しながら、口角をくっと上げるヒロミツがいい。目を合わせるのではなく、あくまでもヒロミツが光一を見ているのがすごくよかった。

〇Ladder Flying
昨年、私が観た公演ではラダーの時にコウイチを見つめながら下唇を噛んでいたヒロミツが印象的だったのだけれど、2023はそれが無くなりました。どういう解釈の変化なのかな。2023のヒロミツの方が、より覚悟が固まっているのかな。

[Eternal]
ヒロミツのEternalほんっっとにすごかった。光一さんが「ヒロミツのEternalが見たい」と言った意味がよく分かりました。
恥ずかしながら、正直に言うとEternalに関しては「コロナ禍でこれ作った堂本光一さん凄すぎると思うし、3年後のライバル役が見られるの最高!ただ、やっぱり回帰するところは本編」と思ってきました。スピンオフ作品ですから、当然と言えば当然かもしれません。

でも、ヒロミツのEternalはすごかった。もちろん、コロナ禍が一定落ち着いて、前よりも演出面で出来ることが増えたというのもあるとは思うんです。それでも私はヒロミツのEternalを観て、「これがEternal?私たちが観てきたEternal?同じEternal???????」と思いました。あまりに良過ぎた。ヒロミツのEternalがこんなに良いなんて知らないから、チケット取るときに本編の割合を多くしてしまったことを本気で後悔しました。Eternalもっと観たかったし、もっと観るべきだった。



〇階段落ち回想
階段落ち前のヒロミツの表情がすごい。表情が大きく動いているわけではないのに、目が離せません。Eternalのこのシーンは、台詞的にも原君の演技の癖的にもハラの演技が目立ちやすいんですけど、ヒロミツが全然ハラに喰われない。表情だけで、ですよ。とんでもないことだと思ってます。

〇Higher
Higherを踊るコウイチの横で苦悩するヒロミツと、3年後にヒロミツがHigherを踊っている光景が重なるシーン。昨年の帝劇Eternal(勝利くんのライバル役)の途中から演出変更となって生まれたものです。3年後のヒロミツは真剣な表情で、にっこりは笑わないけれど、表情は曇っていなくて、少し口角が上がっているのが印象的。

〇CONTINUE
百合の花をおいた後、しばらく止まって、その後ニコっと笑うヒロミツの表情がもう言い表せないくらい胸に刺さる。




北山さん、素敵で新しいSHOCKを教えてくれて、どうもありがとうございました。
私は『愛の唄をうたおう』を観た日から北山さんのミュージカルの大ファンでしたが、長年観てきたSHOCKにこんなにも新しい価値観を持ち込んでくれるなんて思わなかった。
本日38歳を迎え、新たな人生を歩み始めた北山宏光さんに、心からのエールを送ります。
これからも歌い、演技も続けるという彼の今後を、心から楽しみにしています。
彼の新しい人生が、祝福に満ち溢れていますように。
これからも大好きです。