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明後日までは、とても待てない

アイドルに引き寄せられたおんなのはなし

Endless SHOCK 2015 3月19日昼公演

ステージは生き物だ。
それに対応するなんて当たり前のことだろ。

Endless SHOCKでのコウイチの台詞。
セットが舞台袖に引っ掛かり、見せ場で出演し損ねて怒った仲間に言う台詞だ。


Show must go on.(=何があってもショーを続けろ)というフレーズを掲げ、今年も幕を開けたEndless SHOCK。
わたしは今年も何度か観劇し、今日、2015年3月19日も昼公演に行っていた。帝国劇場で2か月に渡る公演を予定し、千穐楽まで2週間を切ったこの日の2幕終盤で事故は起こった。


*最終的には夜公演は中止になりました

事故については記事にするかしないか悩んだが、自らが当時の出演者の方々やスタッフの方々の迅速かつ真摯な対応を目の当たりにした数少ない人の1人であることに加えて、その場にいなかった方々が何もわからず不安を覚えるよりは伝えることで少しでも安心材料になった方が良いかと思い、わたしが見たことを書き残すことにした。

シーンはラダーフライングを終えたインターミッション。このシーンはもう何年も演じられているが、こんな事故は起こったことがない。まさにステージは生き物だった。光一さんは舞台から一度捌け、屋良さんとエマさん(=リカ役)が日本舞踊を踊るシーンである。Endless SHOCKの作中でセットトラブルが起こるのも、ヤラとリカの見せ場だ。単なる偶然だと分かっていながらも、まるでストーリーとリンクするかのようにセットが倒れた。「セットが倒れた」と聞くとグラッと揺れて一気にバタッと倒れるような印象を受けるかもしれないが、実際はそうではなかった。
ちなみにこれは2003年の映像だが、事故が起きたのはこのシーンである。

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今年のLEDパネルがここに写っているものと全く同じかどうかは定かではないが、このシーンに使われている上手側から2つ目のLEDパネルがぐにゃりと上から巻き込むように曲がってしなだれた。わたしが気づいた時には既に上半分がメキメキと曲がっていて、まるでスローモーションを見ているかのような感覚だった。本当にゆっくりと倒れたのかもしれないが、もう記憶が曖昧だ。
わたしが異変に気付くより早いか否か、出演者やスタッフの皆さんが動いた。袖から出てきて、800kgあるというそのセットを両手で必死に支えていた。もうそれ以上倒れないように、下敷きになっている人を守るように、支えていた。気づいた出演者・スタッフさんがどんどんに集まって支えていた(越岡さんがいち早く動いたように記憶していたが、それについては光一さんが否定されていたので、記憶違いでした。わたしも当時はあまり冷静ではなく、記憶が曖昧なのでご容赦願いたいです、すみません。)*1。それでも800kgの重いパネルは非情にもその抵抗を振り払ってゆっくりと舞台の床に倒れていった。

あの時素早く動いた出演者・スタッフの方々が本当に素晴らしかった。舞台をつくりあげる者としての振る舞いがあまりにも適切で。あの場で瞬時に生まれた連携と一体感に心が震えた。
もちろん「事故は起こるべきではない」「起こしてはいけない」というのが大前提で、今回のことは原因が何であれ賞賛することではない。ただ、起こってしまった以上はその場での対応力が問われる。その点、あの対応に言うことはないと言えるだろう。だから何故か、あんなアクシデントを目の当たりにした今も不謹慎かもしれないがどこか感動のような感覚がある。カンパニーの底力にゾクッとしたと言えば良いのだろうか。

もしこの公演で初めてSHOCKを見た人がいたら、初めは演出だと思ったかもしれない。あまりにも作中のテーマに沿ったかのようなアクシデントで、カンパニーやスタッフの対応力が物凄かったから。あの時、舞台手前でメインで踊っていた屋良さんもエマさんも異変には気付いていて、それでも屋良さんは一瞬も止まることなく踊り続けていた。長くに渡ってSHOCKに関わってきた彼の心に宿る演者としての強い思いを見たように思う。
エマさんは立ち位置的には真後ろでパネルが倒れていたことになる。動揺は見て取れたが、踊り続ける屋良さんに思いを同じくするかのように、戸惑いながらも踊り続けていた。自らの真後ろで、ものすごい人数の出演者が集まってセットを支えているのだから動揺は必至で、初のSHOCK出演のなかあそこまで踊り続けた精神力の強さに純粋に感動した。
2人は必死に踊り続けたが、スタッフさんの判断だろう、幕が下り音楽が消えた。
スピーカーから聞こえる「おい、大丈夫か!!!人はどーなってる!下に人はいるのか!?」というスタッフさんの必死な声、幕の向こう側から漏れ聞こえる「せーの!」という声*2。会場全体が困惑し、しばらくしてアナウンスが流れた。
「舞台機構のトラブルにより、公演を一時中断しております。復旧作業をしておりますので、申し訳ありませんがいましばらくお席でお待ちください」というような内容だった。もうしばらくすると幕が下りた舞台袖から支配人の方が出てきて、中止の知らせかと思いきや、改めて謝罪と復旧中であり、時間をいただくとの旨だった。
重ねての「お待ちください」というアナウンスに「受けた印象ほど大きな事故ではなく、少し待てば再開できる程度だったのか。それなら良かった」とわたしは少し安堵した。

しかし、受けた印象通りに事態は重かったらしく、光一さんが舞台袖から出てきて公演中止のお知らせを兼ねた挨拶をした。

皆様、大変申し訳ございません。ご覧になったように、事故が起きてしまいました。復旧の目途がたたず、ここまで観て頂いたのに申し訳ありませんが、公演を中止させていただくことになりました。ちょっと怪我人も出てしまいまして。あ、そんな大きなものではないのですが、…続けられないです。このようなことが起きた際に、出演者として何もできない自分が悔しく、不甲斐なく感じております。本当に申し訳ございませんでした。

というような挨拶だった。突然の事態にも関わらず、スタッフ任せにせず公演中止をまずは自分の口から伝え、謝罪し、自らの無力を口にしながら頭を下げる光一さんが、とても大きかった。その姿は「アイドル」よりも「光一さん」よりも「座長」という名詞がぴったりだった。事故についても観客の思いもすべて背負ってしまいそうな、そんな佇まいだった。公演を続けられないことや、怪我人を出してしまったことに対しての悔やみが見て取れるあの表情が忘れられない。
その後再び支配人の方が出てきて、今後の対応等について説明がなされた。その時にはもう外で救急車のサイレンの音が聞こえていた。

ただセットが倒れただけなら続けられたかもしれないが、とても大きいパネルだった上、巻き込まれている人がいるのなら救助が先なのは当然。公演中止になってしまったことも残念ではあるが仕方がない。会場を出て、救急車と消防車が来ているのを見た。そこにいても邪魔になってしまうので、すぐに駅に向かったが、搬入口では救急隊員の方々が出入りしていて騒然とした雰囲気だった。わたしはすぐに離れてしまったが、その後報道陣なども詰めかけ、夜公演の中止による混乱も重なり、会場付近はかなり混雑していたと夜公演に入る予定だった友人が教えてくれた。
報道も、原因究明やその場にいなかった為に心配している方々の理解の一助になればと思っている。報道をするならどうか正確な情報を。


報道を見る限り、今回の事故について把握できたのは

  • 怪我人6名(ダンサー5名、スタッフ1名)
  • 20代2人、30代2人、40代1人
  • 1人が重傷、他は軽傷
  • 全員命に別状はない

ということだけ。事故原因については警視庁が調査中だという報道がされていた。

わたしは光一さんのファンである以上、彼に悲しい思いをしてほしくはない。しかし、原因が何であれ、直接の責任の所在が誰にあるのであれ、彼は座長で責任を感じる立場にいることは事実である。彼の舞台なのだから。責任をとって具体的にどうこう、というのはないかもしれないが、立場上・彼の性格上、光一さんが責任を感じることは想像に容易い。
今回のことではこのような心配はなさそうに思うが、万一ダンサーの方がダンサーとしては致命的な怪我をして踊れなくなってしまったら?1つの舞台が人の人生を大きく振り回してしまうことになってしまったかもしれないのだ。結果どうだったから良かった、そんな結果論では済まされない事故だったとこの舞台に携わっていたすべての人が考えるべきだと思うし、言われずとも考えているだろう。

光一さんは「こういう時に出演者として何もできない自分が不甲斐ない」と言ったが、わたしだって同じようなことを思う。光一さんが感じている責任も、光一さんの不安も、様々な思いも、実際のところは光一さんにしかわからない。わたしたちだって、舞台のためにも光一さんのためにも何もできないことに不甲斐なさのようなものを感じてしまうのだ。光一さんにとってわたしたち観客はあくまでも「お金を払って観に来ていただいてるお客さま」であって、仕事として取組み、お金を受け取っている以上「その対価を提供するのが当然」と、彼は考えるだろう。長年ファンをやっているとなんとなく分かってしまう。(もちろん個人の予想と想像にすぎないのだけれど。)
ファンが「(直接には)光一くんのせいじゃないよ」「中止になったって大丈夫、気にしてないよ」と言ってみたところで、そんなことは彼には関係ない。わたしや今日の観客の多くが「ファン」であったとしても、彼がひとたび舞台にあがればそれは「座長/演者」と「観客」なのだから。彼にとってはきっとどんなことも事故の言い訳にはならず、公演中止は本来許されることではないのだろう。観客としては誰も怒ってなどいないと思うが、彼はそういう観客の優しさに甘える人間ではない。

光一さんは大多数と相対すれば精神力は強そうなところではあるが、それだってどこまでが本当かは分からない。彼だって人間で、強いからこそ1人で抱えてしまうことだってあるかもしれないし、こういう時には不安だって感じるだろう。それでも表に立つ人間としてもアイドルとしても、揺らがずに凛としていなければならない。その大変さには想像も及ばない。

わたしがどんなに光一さんを好きでも、彼の背負うものを何一つ一緒に背負ってあげることはできないのだ。出る幕などない。ならば、起こってしまったことは残念だし、再発防止には全力を尽くしてもらうとして、わたしは時間がかかっても再び幕が上がることをただひたすらに願い、その時が来たら大きな拍手で彼の作品に賞賛を送るのみである。それが少しでも光一さん、そして他の出演者やスタッフの支えになることを信じて。
どうか怪我をしたダンサーやスタッフの方々が一刻も早く完治しますよう、そしてまたステージに携わることのできる日がくるように今はただ願っています。

*1:日経エンタテイメントの光一さんの連載において、越岡が真っ先に動いたというのは違うと光一さんが仰っていました。*2015/05/04追記

*2:恐らくセットを持ち上げようとしている声